うめたび!

風の向くまま、気の向くまま、旅をするにはまだまだ経験も修行も足りませんが、楽しんで旅をする様子を綴ります。

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アガサ・クリスティ「予告殺人」※ネタバレなし

こんばんは。

今日はアガサ・クリスティ「予告殺人」について語ります。

 

 

 
 のどかな田舎町チッピング・クレグホーンの金曜日の朝。各家にローカル紙の《ギャゼット》が配られる。地元の退屈な記事ばかりの掲載されているこの新聞に、驚くべきことに「殺人予告」が掲載されていました。
 
 殺人が起こる場所は、ミス・ブラックロックというオールド・ミスが親戚や友人と共に暮らすお屋敷。新聞を読んだ町の人達は、退屈な日常に舞い込んだ催しに興味を引かれ、こぞって集まります。
 
 もちろん、誰もが本物の殺人が起こるなどとは思っていません。何かゲームが始まると思い楽しみにしていたところ、予告の時刻と共に部屋の灯りが消え、同時に銃声が響き渡ったのでした。
 
 この恐るべき殺人事件に挑むのが、我らがミス・マープルです。
 
 作中に、登場人物のひとりが、
「チッピング・クレグホーンてのはどんな所なんだい?」
と訊ねるシーンがあるのですが、それに対する返答が、
「ひろびろとした、絵のような村だよ。住宅地としても高級なところだ」
 
 この描写のとおり、チッピング・クレグホーンはのどかな田舎町で、退役軍人や独身の老婦人たちが余生を送るために移り住んでくるような所です。
 
 まず殺人とか強盗なんて血なまぐさい犯罪とは無縁そうなこの村でなぜ殺人が起きたのか?
 犯人の狙いは何なのか? そして殺人は一度で終わらず、二人、三人と犠牲者が増えていきます。
 
 本作の見所は「新聞広告にわざわざいつどこで殺人やりますとか普通言うかー?」という、クリスティならではのシチュエーションです。
 
 ただ、新聞を読んだ町の人は
「えー!ミス・ブラックロックのところで殺人やるって!」と驚きはしますが、 それは「今夜パーティーするからよかったら来てね。殺人ごっこもするよ!」という公開招待状という意味にしか捉えていないんですよね。
 イギリスというか、ヨーロッパではこういう新聞にパーティーの予告やるって、日常のことみたいですね(現代はどうか分かりませんが・・・)
 
 ミス・マープルは町の牧師館に泊まり込み(名付け子がこの町の牧師様と結婚していて、例の殺人パーティーにも招待されているご縁で)、事件のあったお屋敷の女主人、ミス・ブラックロックやその他の住人、パーティーに集まった人達と近づきになって話をして、相手の深層心理に深く分け入っていきます。
 
 この殺人事件はただの?遺産目当てとかではなく、一人の弱い人間が保身から犯した悲しい事件であることをマープルさんは突き止めるのですが、その動機や罪のない人を手にかけてしまう犯人への同情も見せています。
  
 これまで、どんな相手であれ、殺人者にはいっさい憐憫の情を見せないマープルさんには珍しいことです。
 ほんの少し運命が違ったら、自分も同じような犯罪をするかもしれない人間のもろさをマープルさんは知っているからかも知れません・・・
 

 

真冬はこの1着でOK!防寒の強い味方/ワークマン/AERO STRETCH ULTIMATE(エアロストレッチアルティメット)フーデッドパーカー

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AERO STRETCH ULTIMATE(エアロストレッチアルティメット)フーデッドパーカー

 

本日は防寒、コートについておすすめの商品を。

 

WORKMANの防寒着ブルゾンです。

ここ数年、WORKMANの商品はとても評価されて人気も高くて。私も以前にテレビで紹介されているのを見て、新しい冬用のコートがほしかったので探してみました。

 

WORKMANはもともと、外で作業する人、働く人のための商品を扱っていて、防寒、防水に優れた上着や作業着があった訳ですが。キャンプやハイキングといったアウトドア向けの防寒着を作ったり、街中でも着やすいお洒落なデザインを取り入れたりと開発を重ねて今や大人気ブランドになりましたね。

 

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本当は「防寒裏アルミコート」が欲しくて店舗へ行ったのですが、残念ながら見つからず、あれこれ探してこちら(フーデッドパーカー)にしたのですが・・・

 

控えめに言って大正解でした♬

 

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背面はこんな感じ

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LLサイズで、肩から裾まで約70㎝でした

 

こちらも、中にアルミプリントの反射材がついています。

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反射性の高いアルミプリント

外を歩いていると体があたたまってくるのですが、この反射材のお陰でそのあたたまった体温が保たれて、寒さを感じないのです!

 

ちょっと天気の良い日とか、日なたを歩いているとそのうち汗ばんできます笑

風も通さないから、本当にありがたいです!!!

 

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防寒に優れているだけでなく、収納力もすごいです。

胸元にひとつ(定期とかおうちのカギをしまっておくと便利かも)

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このポケット、なかなか深いです

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外ポケットは左右にひとつずつ

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外側だけでなく、内側にもあります。

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内側にも大きなポケット部分があります

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メッシュポケットのさらに奥にも・・・

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小さめのペットボトルとか水筒とか入れるためかな?

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反対側にも!

反対側にもあります。

こうなると、あちこちのポケットに小物しまいすぎて、どこに何を入れたか探しまくる・・・という事にもなりそうですねσ(^◇^;)

 

フードもしっかりついていて、雨の時は助かるなと思うのですが、使わない時は首まわりがゴワゴワする?かと懸念していたのですが・・・

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これ!後ろにボタンで留めることが出来るんです!

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フードを留めて固定することで首元すっきりします

いろいろと細かいところまで気配りが行き届いている優れものですね♬

 

…と言うわけで、この多収納を活かしてちょっとしたお散歩スタイルを決めたいと思います。

 

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これら全てポケットにしまいます

ミニ財布、スマホ、ハンカチ、ウェットティッシュ、ポーチ付きティッシュ入れ、文庫本・・・これを全部、ポケットにしまいます。

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スマホは外ポケットに入れました(反対側にはICカードと家のカギを)

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内側にこれだけしまって着用してみるとこんな感じです。

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・・・ちょっと、見えづらくてすみませんm(_ _)m

でも内側に小物をあれこれ入れているとは、ぱっと見わからないくらい、スッキリして見えますよね♬

持ち物を厳選したからとは思いますが・・・

 

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これなら近所にちょっと買い物とか、散歩するに充分です!

 

あ、着丈はLLサイズで約70㎝ですが、167㎝の私が着用してぎりぎりお尻が隠れるくらいの長さです。

 

LLはでかすぎるかなー?と思ったのですが、着慣れてみると別に不便なこともなく、とっても快適です♬

 

これでお値段が3,900円なんて、まじ最強すぎます・・・

雪でも風でも、これがあれば何とかなる、ほんとにおすすめです!!

 

 

https://workman.jp/shop/g/g2300036265014/

人工的な明かりに揺れる不安・・・アガサ・クリスティ「蒼ざめた馬」※ネタバレなし

今日もアガサ・クリスティの作品について語ります。

 

「蒼ざめた馬」

 
主人公はロンドンに住む若き歴史学者・マーク・イースターブルック。
学問と研究の論文執筆に励みながら、自分にふさわしい(見た目、教養や育ちといった意味で釣り合っている)ガールフレンドとデートもする、いたって普通の青年です。
 
ある夜、1人の神父が霧のたちこめるロンドンで撲殺される事件が起こります。被害者は靴の中に手書きのメモを残しており、そこには複数の人の名前が書いてありました。しかも、そのメモに残された名前のうち、数人は既に亡くなっていたのです。
 
その謎めいたメモに興味を抱くマーク・・・実は、彼の親戚にあたる老婦人の名前もそこに書かれており、既に死亡していたからなのです。
 
 彼は独自の調査に乗り出し、やがて奇妙な噂を耳にします。それはある田舎町の古ぼけた館「蒼ざめた馬」に住む三人の老嬢が、「魔法」をかけて人間を呪い殺しているというもの。
 
「死んで欲しい人が居るなら、蒼ざめた馬へ行けばいい」という合い言葉がまことしやかないささやかれているというのです。
 
 この現代にそんな黒魔術的なことが存在するはずがないと半信半疑ながら、マークは真相を突き止めるため「蒼ざめた馬」へ行き、三人の老嬢と対峙するのでした。そして事件は思わぬ展開を見せます。
 
 本作はミス・マープルもエルキュール・ポワロも出てきません。ごく普通の青年が日常生活の中で事件に巻き込まれていくお話です。
 
 しかし、知的好奇心にあふれ、自ら事件に関わっていくところはミス・マープルと似ていますね(ポワロは探偵業なので、向こうから事件が舞い込んできますが)。
 
 本作はお馴染みのキャラクターがいない代わりに魅力的で興味深い人物がたくさん登場します。
 
 主人公マークの友人に、ポワロの「ひらいたトランプ」で登場した女性推理小説家のオリヴァ夫人が出てきますし、 マークの従姉妹としてローダ・デスパード夫人とその夫のデスパード少佐が登場します。この二人も「ひらいたトランプ」に登場し、作中で結ばれたカップルなのです!!
 
 読んでいて、「あ”ー!オリヴァ夫人!!」とか「ローダじゃん!」とか思ってしまうクリスティヲタク笑
 
 もちろん興味深い登場人物はまだまだいます。「蒼ざめた馬」の住人である三人の老嬢(サーザ・グレイ、シビル、料理人で女中のベラ)・・・しかし三人とも「いかにも怪しい」といった雰囲気はなく、サーザは見た目いたってまともで教養もある女性として描かれています。シビルは東洋かぶれのきらいはありますが、でも無害そうな人だし、ベラは年老いてはいますが有能な料理人です。
 
 マークは三人が魔法だの呪いだの使うことを信じられないまま、ローダの友人であるジンジャ(というニックネームの女性)の協力を得て、彼女の身に実際に「呪い」をかけるというぶっ飛んだ作戦に出ます。
 ・・・ところが本当に呪いが効いて???それまで健康体だったジンジャに病気の兆候が現れたもんだから慌てふためき、パニックに陥るマーク。
 そこへ、オリヴァ夫人がある助言をすることで事件は解決へ向かいます。
 
 割と最後までハラハラドキドキしながら読み進めました。
 
 クリスティの物語の舞台は、現代のロンドンではありますが、2000年代ではなく、1900年代の、日本で例えるなら「昭和」の時代。
 
 電気もガスあって自動車や飛行機、列車もあります。もう「魔法」だの「呪術」なんて超自然的なものは小説の中の出来事、迷信ごととしてうち捨てられている訳です。
 
 そんな中、呪文で人を殺すなんて誰もにわかには信じてくれない・・・今回はそれをうまく利用した犯罪が描かれています。 

 

大胆不敵な犯罪に挑む灰色の脳細胞/アガサ・クリスティ「ひらいたトランプ」※ネタバレなし

今日は、アガサクリスティー「ひらいたトランプ」について語ります。

 

 

ずっと「ミス・マープル」シリーズについて書いてきましたが、今回はミス・マープルと人気を二分するもう1人の名探偵、エルキュール・ポワロのお話です。

 

 場所はロンドン。ごく少数のゲストだけを招いた小さなパーティーの席上、ホストである社交界で悪名高いシャイタナ氏が刺殺されます。それも、同じ部屋で四人の人間がブリッジに興じている間に刺殺されるという大胆な犯行でした。

 

 そのパーティーに招待されていたのがベルギーから亡命した名探偵、エルキュール・ポワロ。

 

 彼は自分の目の前で殺人が起こったことに憤り、調査に乗り出します。

 

 ポワロは、シャイタナ氏から問題のパーティーに誘われた際、気になることを聞いていたのです。

 

 それは、「過去に殺人を犯しながら、まんまと逃げおおせた人物を招待しますよ」とシャイタナ氏が、明るみになっていない殺人犯人を知っていると匂わせていたことでした。

 

 パーティーに招待されていたのは、ポワロの他に有名な女性推理小説家オリヴァー夫人、裕福で気高い雰囲気をもつ年老いた未亡人のロリマー夫人、諜報局員のレイス大佐、冒険家のデスパード少佐、年若いミス・メレディス、抜け目のないドクター・ロバーツ、そして警察官であるバトル警視。

 

 シャイタナ氏と同じ部屋でブリッジをやっていた、ドクター・ロバーツ 、デスパード少佐、ミス・メレディス、ロリマー夫人の四人が、とりあえず容疑者として取り調べを受けることになりました。

 

 ポワロは独自の調査方法を用いて四人の容疑者に近づきます。問題のブリッジはどのように進行していったのか? 誰が一番ゲームに強いか?

 それと殺人とどんな関係があるのか疑問を抱きながら、四人はそれぞれ供述を始めます。しかし、ポワロの真の狙いはブリッジの勝敗などではなく、ゲームを通じて現れる容疑者たちの人間性、性質を深く掘り下げることなのでした。

 

 ポワロの聞き込みと、バトル軽視の調査が進むうち、四人の過去がだんだん明らかになっていきます。シャイタナが言ったように、このうちの誰かが過去に殺人を犯し、そのためにシャイタナは殺されることになったのか? それはいった誰なのか?

 

 物語は終盤に急展開を迎え、意外な人物が真犯人として名指しされるのでした。

 

 本作は、まずブリッジというカードゲームが大きなカギを握っているので、このゲームを知っていないと「ちょっとよく分からない・・・」という箇所がいくつか出てきます。

 ルールとか、点数のつけ方とか。カードゲーム中にどうやって席を外して人を刺したりできるのか?

 

 作中に簡単な説明ももちろんありますし、知らないから「この話、つまんなーーーい」なんて事はありませんので、ご安心ください。私もブリッジなんて聞いたことはあるけどやったことないし(トランプなんてババ抜きとか七並べくらいしかやったことないです・・・)、それでも充分、引き込まれました!

 

 ポワロは、ミス・マープルとよく比較されますが、ミス・マープルと比べると何もかも正反対というか(まあ性別もまず違いますけどね)。

 

 ミス・マープルが謙虚でおとなしい性格なのに対して、不遜なほど自信家だったり(失敗ということは、このポワロに限ってありません。この灰色の脳細胞がすべてを解き明かします、とか言うし)

 ロンドンの洒落たマンションで暮らして、外国へもよく行くし。神経質で潔癖症なところがあり、自身のチョビ髭に異常なこだわりを持って手入れするし。

 

 要するに何かと鼻につくのですが、そんなクセの強いところもポワロの魅力。彼の風変わりな聞き込みに、人はまんまと騙されて口を開いてしまうのです(若い子には、あのおじいちゃん、本当に名探偵なの?もうヨボヨボじゃないなんて散々な言われようなのです)。

 

 カードゲームの最中に人を殺すなんて大胆不敵な犯罪に、ポワロがどう挑み真相を掴んでいくのか。意外な真犯人、結末にも目が離せない、大注目の一冊です。

 

のどかな田舎町にうごめく殺意・・・アガサ・クリスティ「牧師館の殺人」※ネタバレなし

今日はアガサ・クリスティ

「牧師館の殺人」について語ります。

 

 

クリスティの大人気キャラクター、ミス・マープルの長編初登場の作品としても人気の高い本作。ロンドン郊外の小さな田舎町セント・メアリ・ミードの、場所もあろうに牧師館で殺人が起こります。

 

被害者は、横暴で独善的な町の老判事プロズロウ大佐。

 

容疑者は彼の実の娘、若い後妻、その愛人、町へやって来たばかりの謎めいた美しい夫人、また彼をよく思わない人達・・・と枚挙にいとまがありません。

 

そんな中、意外な人物が警察に自首をしたことで、事件はあっけなく幕を閉じるかに見えましたが・・・我らがミス・マープルの目は誤魔化されず、クレメント牧師(事件のあった牧師館の主で町の牧師様)と共に事件解決のために奔走します。

 

ミス・マープルって物語の中で、事件について語る時によく「私が若い娘だった頃は」とか、自身の経験を踏まえて話すことが多くて。

「私の住んでおります、セント・メアリ・ミードでは・・・」って枕詞みたいに使ったりするのです。それくらい、彼女とセント・メアリ・ミードって切り離せない深い関係(居住しているんだから当然ですが)にあります。

 

その噂の? セント・メアリ・ミードが舞台なので、わくわくして読み進めるのですが、事件が起こった時、牧師館て場所はまあともかく、

 

 

よくこんな田舎で殺人やったな

 

と思いました。

 

サスペンスドラマのクライマックスでよくある「犯人と崖の上で対峙する」シーンを観ても思いますが、

「崖の上とか呼ばれたって普通行かねーよ」みたいなものですよね(????)

 

令和になった現代こそ「プライバシーの尊重」「個人情報保護」「不干渉」が重視されていますが、古き良き時代の英国のセント・メアリ・ミードにそんなワードは存在しません。

 

本作の語り手でもあるクレメント牧師が、穿鑿好きなオールド・ミス達にうんざりして、

「この村ではみんないったいどうやってご飯を食べているんだろうね? きっと窓辺に立ったまま食事をしているに違いない。通りで起こることを何ひとつ見逃さないために」

なんてぼやぼやくシーンがあるくらい、住民のささいな行動がすべて筒抜け。何でもすぐ噂になってしまいます。

 

そんな町で殺人を犯すわけですから。犯人の肝っ玉はすごいもんです。

当然、口さがない老婦人たち(ミスもミセスも関係なく)はあれこれ噂を立て、どこまで信じてよいのか分からない情報を警察に提供し始めます。

 

ミス・マープルは「ゴシップにこそ真実が隠れているもの」と、自身も町の噂に耳を傾け、おしゃべりをし、その実じっくりと真相に近づきます。

 序盤に出てくる小さな謎や伏線の回収が鮮やかなのもクリスティ作品の魅力だと思っているのですが、事件解決後、「あー、そういうことだったんだ!」と分かりやすく解決していくのも面白い。

 

 心ならずも殺人事件に巻き込まれくたくたのクレメント牧師のもとへ、事件後にある幸運がやって来ます。彼の妻は「ぜったいに秘密にしてね!」と念を押すのですが、当然?ミス・マープルは一目で見抜いています。それが何かは本作を読んでのお楽しみにしていただきたいのですが・・・クレメント牧師がいみじくも言ったとおり、

「暇を持て余しているオールド・ミスに匹敵するような探偵は、イギリスにはいない」のです。

 

 

 

謎解きはティータイムのあとで・・・「パディントン発4時50分」アガサ・クリスティ※若干ネタバレ

今日も、アガサ・クリスティの作品について語ります。

 

パディントン発4時50分」

 

 

物語は、マクギリカディ夫人という老婦人が、乗り合わせた列車と並行して走る列車の窓から、若い女が首を絞められ殺される現場を目撃するショッキングな場面から始まります。

 

あまりに現実離れした出来事に、マクギリカディ夫人は強いショックを受けながらも車掌や鉄道関係者に事の次第を訴えますが、まともに取り合ってもらえません。

そこに登場するのが、我らがミス・マープルです。

 

本作は殺人から始まり、一気に物語の世界に引き込まれます。平行する列車内で殺人を目撃するが、犯人はそれからどうしたのか?殺された女の死体はどこに隠されたのか?が序盤の最大の謎として立ちはだかります。

 

クリスティの文章は、読者目線で進行するのが大きな魅力だと思っています。

 

序盤では死体探しに奔走するミス・マープルの目線で物語が進み、私もミス・マープルと一緒に冒険しているような気持ちで読み進めていきました。警察でまともに相手してもらえない歯がゆさ、死体探しに難航する焦りを感じ・・・

 

そして、中盤からはミス・マープルが事件捜査の相棒に選び、死体が隠されていると確信する「ラザフォード邸」へ内偵に送り込む本作品のもう1人のヒロイン、ミス・ルーシー・アイレスバロウの目線に変わります。

 

彼女と一緒に屋敷内を掃除したり料理したりして、働きながら裏では死体を探し、お屋敷の内情を調べていくうちに我知らずラザフォード邸やそこで暮らす人々に興味をそそられてしまいます。

 

このルーシーという若い女性は、オックスフォード大出身、頭脳明晰ながら肉体労働をいとわず、知的好奇心に満ちてかつ美人というパーフェクトな人なのですが。

ミス・マープルに「死体を探してくれ」というとんでもない依頼を受け、最初は面食らいますがやがてノリノリで捜索するという柔軟なアタマの持ち主でもあるのです。

 

捜索の結果をミス・マープルに報告しに来るのですが、依頼主であるミス・マープルは「お茶の間は殺人のことなんて忘れましょうよ」

などと呑気に言うのです。自分で依頼しておいて・・・でもこのお茶の時間、つまりティータイムが今回事件の真相を明らかにする大きなカギでもあることが、のちのち分かります(本当に最後の最後でようやく分かった!)。

 

本作は殺人の謎解きと、もうひとつ、この若いルーシーの恋の行方も大きな見所となっています。クラッケンソープ氏をはじめ一癖も二癖もある息子達と娘婿まで(妻は他界しているので現在は独身)が彼女に何らかの形で言い寄ってきます。

 

その合間に殺人が二度、三度と繰り返されるので、絶妙な緊張感が生まれます。

 

ルーシーが一体誰と結ばれるのか?

それとも、言い寄るふりをして実はこそこそ嗅ぎ回るルーシーを手なずけるor殺そうとしているのではないか?!

 

・・・と読んでいて疑心暗鬼になってハラハラしました。

 

ミス・マープルは頻繁には登場しないのですが、ここぞというクライマックスにはきちんと活躍します。最後の謎解きも、美味しくお茶をいただきながら、あっといわせる展開で真犯人をあぶり出し、そう、お茶の間は殺人のことなんて忘れましょうよ、と言っておきながら自分はそのティータイムを利用して犯人を突き止めるわけですから、何とも憎い演出ですね。

 

真犯人も最後は捕まり、事件は解決しましたが、もうひとつの見所だったルーシーの恋の行方については結局、曖昧なままで物語は幕を閉じます。

ルーシーは誰を選んだのか?未だに論争があるようですが(おおげさ?)、私個人の意見としては、そこを敢えてはっきりしないまま終わらせたのはよかったのではないかと思います・・・大切なのはあくまで事件解決で、そして明るい未来を予兆させてくれたこと。

ルーシーと、個人的に好きなキャラだったエマ・クラッケンソープ(一家のオールドミスの優しい長女です)に幸せが待っているだろうと作者のクリスティーは教えてくれるわけで、それで充分だと思うのです。

 

冒頭から目が離せないミステリーの傑作、おすすめです!

 

 

 

 

 

 

アガサ・クリスティ「バートラム・ホテルにて」を読む!※ネタバレ無し

お久しぶりの投稿となってしまいました・・・

本日は、言わずと知れた「ミステリーの女王」アガサ・クリスティの後期の名作「バートラム・ホテルにて」を読んだ感想を書きます。

 

ミステリーの女王の名にふさわしい、名作だと思っていますが、人によっては退屈してしまうところもあるかもしれません。なぜなら・・・・

 

なかなか殺人事件が起こらないから笑

 

大人気シリーズのミス・マープルが主人公の本作は、題名にもあるとおりロンドンの老舗ホテルを舞台に繰り広げられる複雑に絡み合う人間模様が主軸となっています。

 

ホテルに集う人間関係を縦糸に、ロンドンで横行する強盗事件を横糸に物語は進んでいきますが・・・

冒頭で述べた通り、殺人がなかなか起こらないです。

 

序盤はミス・マープルが若い娘だった時代に滞在したという思い出を胸に、バートラムの変わらぬ佇まい、部屋の内装や調度品、行き届いたサービスや昔ながらのお茶(今でいうアフタヌーンティー)を楽しむ描写が続きます。

そこはマープルさんらしく、ホテルにやって来る人々を観察し、興味の引かれた人物について考察します。破天荒な言動で知られる著名な女性とか、もの忘れがひどくなっている神父とか、謎めいた美少女とかエトセトラ・・・

 雰囲気、サービス、お料理など非の打ち所のない完璧すぎるバートラム・ホテルそのものへのかすかな違和感にも敏感に反応します。

 

そしてそして。

 

特筆すべきがアフタヌーンティーに出てくるスイーツの数々。

 

英国はなぜか料理が貧相、というイメージがつきまとっていますが、昔から「午後のお茶」が上中階級では当たり前に慣れ親しまれてきたのですから。お茶請けの美味しいスイーツはたくさんあった訳です。

 

シードケーキとか。スコーンとか。マフィンとか。ジャム入りドーナツ、クランペット(初めて聞いた時はトランペットみたいな楽器の名前かと思った汗)・・・

 

きっとこんな感じで優雅な時間を過ごしていたのだろうな~~~~と妄想が膨らみます・・・

 

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見た目も味も完璧そうなアフタヌーンティーセット♬


アフタヌーンティーのフリー素材 https://www.pakutaso.com/20120848230post-1832.html

 

何の話だったっけ汗

 

そう。殺人事件がなかなか起こらないという話でした。

でもでも!事件がまったくないという訳ではなくて、夜行列車が強盗団に襲われたり、もの忘れのひどい神父がバートラムから出かけたっきり行方不明になったり、不穏な空気は少しずつ、マープルさんに迫っていくのです。

 

そして終盤になってようやく?ホテルのドアマンが濃霧に紛れて射殺されてしまう事件が起こります。

 

しかも、ただドアマンが殺されたのではなく、実は犯人の狙いは父親から莫大な遺産を相続した謎めいた美少女だったと分かり、彼女の生き別れの母親、その愛人で狙われた少女の恋人でもあるカーレーサーも絡んできて事件は二転三転します。

 

 序盤のバートラム・ホテルで繰り広げられる古き良き時代を思わせる英国の上流階級の人々の様子と美味しそうなスイーツから、中盤で列車強盗や神父の失踪事件と少しずつきな臭い展開を見せて、終盤で一気に殺人という最悪の事態と真犯人が分かるまでの急展開と、読んでいてまったく飽きさせない筆力とストーリー性の強さはさすが!と思います。

 

とは言え、初めてアガサ・クリスティを読んだのが本作だったら、まどろっこしいという印象を抱いてしまうかもしれません。

 でも海外のミステリーって事件が起こるまでの前振りや伏線の張り巡らせ方が長い気もするし。クリスティ大好きな人は必ず楽しめる1冊です。