アガサ・クリスティ「バートラム・ホテルにて」を読む!※ネタバレ無し
お久しぶりの投稿となってしまいました・・・
本日は、言わずと知れた「ミステリーの女王」アガサ・クリスティの後期の名作「バートラム・ホテルにて」を読んだ感想を書きます。
ミステリーの女王の名にふさわしい、名作だと思っていますが、人によっては退屈してしまうところもあるかもしれません。なぜなら・・・・
なかなか殺人事件が起こらないから笑
大人気シリーズのミス・マープルが主人公の本作は、題名にもあるとおりロンドンの老舗ホテルを舞台に繰り広げられる複雑に絡み合う人間模様が主軸となっています。
ホテルに集う人間関係を縦糸に、ロンドンで横行する強盗事件を横糸に物語は進んでいきますが・・・
冒頭で述べた通り、殺人がなかなか起こらないです。
序盤はミス・マープルが若い娘だった時代に滞在したという思い出を胸に、バートラムの変わらぬ佇まい、部屋の内装や調度品、行き届いたサービスや昔ながらのお茶(今でいうアフタヌーンティー)を楽しむ描写が続きます。
そこはマープルさんらしく、ホテルにやって来る人々を観察し、興味の引かれた人物について考察します。破天荒な言動で知られる著名な女性とか、もの忘れがひどくなっている神父とか、謎めいた美少女とかエトセトラ・・・
雰囲気、サービス、お料理など非の打ち所のない完璧すぎるバートラム・ホテルそのものへのかすかな違和感にも敏感に反応します。
そしてそして。
英国はなぜか料理が貧相、というイメージがつきまとっていますが、昔から「午後のお茶」が上中階級では当たり前に慣れ親しまれてきたのですから。お茶請けの美味しいスイーツはたくさんあった訳です。
シードケーキとか。スコーンとか。マフィンとか。ジャム入りドーナツ、クランペット(初めて聞いた時はトランペットみたいな楽器の名前かと思った汗)・・・
きっとこんな感じで優雅な時間を過ごしていたのだろうな~~~~と妄想が膨らみます・・・
アフタヌーンティーのフリー素材 https://www.pakutaso.com/20120848230post-1832.html
何の話だったっけ汗
そう。殺人事件がなかなか起こらないという話でした。
でもでも!事件がまったくないという訳ではなくて、夜行列車が強盗団に襲われたり、もの忘れのひどい神父がバートラムから出かけたっきり行方不明になったり、不穏な空気は少しずつ、マープルさんに迫っていくのです。
そして終盤になってようやく?ホテルのドアマンが濃霧に紛れて射殺されてしまう事件が起こります。
しかも、ただドアマンが殺されたのではなく、実は犯人の狙いは父親から莫大な遺産を相続した謎めいた美少女だったと分かり、彼女の生き別れの母親、その愛人で狙われた少女の恋人でもあるカーレーサーも絡んできて事件は二転三転します。
序盤のバートラム・ホテルで繰り広げられる古き良き時代を思わせる英国の上流階級の人々の様子と美味しそうなスイーツから、中盤で列車強盗や神父の失踪事件と少しずつきな臭い展開を見せて、終盤で一気に殺人という最悪の事態と真犯人が分かるまでの急展開と、読んでいてまったく飽きさせない筆力とストーリー性の強さはさすが!と思います。
とは言え、初めてアガサ・クリスティを読んだのが本作だったら、まどろっこしいという印象を抱いてしまうかもしれません。
でも海外のミステリーって事件が起こるまでの前振りや伏線の張り巡らせ方が長い気もするし。クリスティ大好きな人は必ず楽しめる1冊です。