紙上のコント
小説家の書くエッセイが一番好きとか言いましたが。
唯一の例外が群ようこ氏です。
古くは「鞄に本だけつめこんで」
これを読んで、一気にファンになりました。
文章の読みやすさ、彼女を取り巻く面白おかしい人々を
表現する時の独特の描写とか呼び名(別の小説ですが、
登場人物を“まじめな人”とか“売れない演歌歌手”と呼称し
ずっとそれで通してた)とかとても面白くて身近な出来事として
親近感を持たせてくれます。
亜細亜ふむふむ紀行は、タイトル通り、
香港、ソウル、大阪を訪れた際のドタバタを
綴った紀行エッセイですが、1993年と
返還前(何年前だよ)の香港で少し買い物をして
(他の同行者は凄まじい勢いで買い物してますが)、
たくさん食べて、でも酷暑な香港で体調を崩して
寝込んでしまったり、そんな珍道中が生き生きと
綴られています。
著者が、ホテルでへたばっている間、他の
同行者達がナイトマーケットを訪ねたり、
マカオのカジノでの話を、すべて「聞いた話」と
しながら面白おかしく語っています。その様子は
本当に紙上のコント。筆者と一緒にドキドキハラハラ、
イライラ、わくわくしながら旅をしている気分になれます。
登場人物として出てくる同行者達も魅力的で、
いつもぼんやりのんびりして「世界一買い物が下手くそな女」と
こき下ろされながらも幹事として奮闘する女性とか、
機関銃張りに喋りまくる女性とか、
出発当日に大遅刻してひんしゅくを買う男の子とか、
賑やかで楽しそうで、絶対さびしくなさそうな面々です。
マカオのカジノで、機関銃おしゃべり女と大遅刻男子が
ルーレットで偶然出会った可愛い女の子(中国人?)を
勝手にキャサリンとか名付けて夢中になったりするところとか、
もうどこから突っ込んでいいか分からないくらい面白い。
大好きな1冊です。